ごあいさつ
アルピニストは、何故、辛い思いをしてまで山に登るのか?
答えは様々でしょうが、ある人は、
「登った人間にしか見られない風景があるから」と答えました。
「途中、何度も登り始めたことを後悔するけれど、
頂上にたどり着いた時、それまでの辛さを超越する喜びを感じられる。
山を下りても、その感動が忘れられず、またそれを味わいたくて、
山の頂を目指す・・・その繰り返し。」
音楽は山登りに似ています。
長く、険しく、果てしない道のり…。
しかし、たった一度でも、音楽で魂が震える経験をしてしまった人間は、
もう後に引き返すことはできません。
もう一度、その感覚を味わいたくて、辛いと分かっている道を、また進むのです。
しかし、彼らにも「初めての登山」があったのです。
山の魅力を知る前に、頂に登った人間にしか見られない風景をまだ見ぬ前に、
山に登ってみたいと思い、足を踏み入れた日があったのです。
登る辛さを想像し、怖れ、足を踏み入れない人もいます。
途中で引き返す人もいます。
しかし、その人は登ったのです。
登ったからこそ、登った者にしか見ることのできない風景を、
手に入れることができたのです。
音楽の道へ進むと決めたなら、
その、初めての登山と同じような経験をすることになるでしょう。
はじめは体力も精神力もみなぎり、道もなだらかで、気分よく歩けることでしょう。
美しい自然に触れ「あ~、こんな世界があったのか」と思うでしょう。
少しずつ、世間の喧噪から遠ざかり、ただただ歩き続ける中で、
無心という、例えようのない安らかな精神状態を感じることもあるでしょう。
途中ですれ違う人たちから、頂上の素晴らしさを聞いて、
早く早くと、気持ちばかり先走ることもあるでしょう。
少し登ったところで、美しい花畑を見つけたら、それで満足して、
「下山してもいいかな・・・」と思うこともあるでしょう。
長く歩き続けて、疲れがたまってくると、
「何故こんなことを始めたのか・・・」と悩む時もあるでしょう。
険しい坂道を登っている時には、
「もう辞めたい」と思うこともあるでしょう。
しかし、それらの道程を経て初めて、山頂にたどり着けるのです。
頂を目指すのに、楽な道のりは存在しません。
また、簡単に手に入れたものには、人は感動できない生きものなのです。
私もかつては、多くの方々の力を借りて、「初めての登山」を経験しました。
あなたが、本当に音楽の道に進むと決めたのなら、
時には励まし、時には背中を押し、時には休ませ、
登り始めたその山の頂にたどり着けるよう、導いていきます。
さあ、次はあなたの番です。
誰もが見ることができるわけではない、
自分の足でその山を登った者だけが見られる風景を、
見てみたいと思いませんか?
関根希美子音楽研究会



